日本現存近代中国法制関連書目データベース

西 英昭 (九州大学法学研究院) *



序言


 本目録は、中華民国時期に中国において出版された法律関連書籍の目録である。近年の中国近代法史研究への関心の高まりとともに、多くの研究論文が発表されるようになったが、その研究の確固たる基礎としての資料情況に関する情報は、これまで十分に提供されてきたとは言い難い。即ち、民国時期の法律に関する書籍が一体どの程度あるのか、この単純な基礎情報が我々の手元に十分に蓄積されてこなかったのである。
 一方でこうした情報を集めようにも、関連情報の検索の困難さはさらなる悪条件となってそれを阻んでいた。外国書でありかつ古い時代の書籍であるということで、各図書館での書誌データの遡及入力が追いつかず、蔵書がすぐ近くにあるにも関わらずその情報がもたらされないという中で、国内での関連資料の捜索はこれまで放置されてきた。全く以て「宝の持ち腐れ」の情況が現在まで続いているのである。
 本目録はこうした資料情況の改善を図る目的で、日本国内に所蔵される中華民国時期法律書につきその所蔵情報をも付した形でのデータベース化を行ったものである。
 作業工程としては以下の方法をとった。まず『現代中国関係中国語文献総合目録』(アジア経済研究所・1967)より法律関係と思料される書籍を拾い上げ、大まかな分野ごとにこれを分類した後、その所蔵確認を行った。所蔵機関のうちで関連書籍が数点に止まりかつ他機関でも所蔵がある場合は煩瑣のためこれを割愛した。取り上げた所蔵機関については書庫内での悉皆現物調査を基本とし、それが不可能であった機関についてはそのカード目録、冊子体の目録、OPACなどによってその所蔵を確認し(1)、請求記号を付してある。筆者が参照した目録自体が既に誤った情報を伝えている場合はいかんともし難く、また筆者の責任の範囲を超えるため、ご容赦を賜りたい。閲覧に赴かれる際は、事前に図書館を通じて所蔵確認をされることをお勧めする。
 本目録は以上の手順を踏んだのみのものであり、日本国内にはさらに本目録を上回る近代中国法関連書籍が眠っていることであろう。本目録はあくまで資料捜索の手がかりとして編纂されたものであり、利用者の手によって情報が補充されてゆくことを望むものである。従って本目録で取り上げた書籍が本目録で取り上げていない機関に所蔵されることもある。本目録利用の際は必ずNacsis-Webcatや各大学のOPACなどを併用されたい。
 また周知のことであるが、中国において編纂された北京図書館編『民国時期総書目(1911-1949)法律』(書目文献出版社・1990)は、北京図書館・上海図書館・重慶市図書館の関連書籍を整理した、民国時期に出版された法律書の目録としては現在最も利用価値の高いもの(2)であり、おそらくは当然のことながら本目録よりも多くの書籍が収録されているものと思われる。勿論本目録との併用をお勧めしたいが、ただ同総書目が凡例において「上海図書館和重慶市図書館的館蔵標記、是根拠両館五十年代末六十年代初的蔵書情況標柱的、与現在実際蔵書情況不尽符合」と述べるように、総書目に収録されながら現在所在不明となっているものもある。あるいはそうした行方不明本を本目録で見つけることが出来るかもしれないし、また中国まで行かなくても国内の蔵書で即座に見ることができるものも本目録で見つけることができよう。国内蔵書といういわば「持てる宝」をまずは整理したうえで、海外での資料収集を効率的に行う、ということが研究資源の節約の上でも有用なことと思われる。本目録が近代中国法制史のみならず広く近代中国を手がける研究者の一助ともなれば幸いである。
 なお本目録のデータ入力には、九州大学法学部の禰宜克也君、同法学府の山口亮介君の多大な助力を得た。明記して感謝する。また本データベースは平成19・20年度科学研究費補助金(若手研究(B)・課題番号19730008)の助成を受けたものである。
 1. 補助的に利用した目録としては『京都大学東アジア関連文献目録』(京都大学経済学研究科上海センター・2006)、『東京大学東洋文化研究所 現代中国書分類目録』(東京大学東洋文化研究所・1996)がある。
 2. なお中国では中国政法大学図書館編『中国法律図書総目』(中国政法大学出版社・1991)も出版されているが、同書は書目のみで具体的な所蔵先に関する情報を欠き、実用には不便である。中国の各大学・図書館ではOPACの整備もずいぶんと進んではいるが、民国時期の書籍についてはまだ遡及入力が追いついていないようである。

凡例
  • 目録は大きく一般書籍、法令集、判例集その他に分け、一般書籍については法学概論、法制史、憲法、行政法、民法(総論、総則、物権、債、婚姻・親族、継承)、商事法(商事法・総論、公司法、票拠法、保険法、海商法)、刑法、訴訟法、土地法、労働法、諸法、慣習調査、国際法(国際法、条約集)、辞典に分類してある。
  • 書名・著者名・出版年・出版社及び版・所蔵及び請求記号(括弧内)・備考の順に表示。
  • 所蔵機関略称は以下の通り
  国会図:国立国会図書館
  東洋文庫:東洋文庫
  東大総:東京大学総合図書館
  東大法:東京大学法学部図書館
  東大文:東京大学文学部図書館
  東文研:東京大学東洋文化研究所図書館
  一橋大経研:一橋大学経済研究所図書館
  早大中央:早稲田大学中央図書館
  慶應図:慶應義塾大学三田メディアセンター(旧館)
  アジ研:アジア経済研究所図書館
  中研:中国研究所図書館
  愛知大図:愛知大学図書館
  京大法:京都大学法学部図書館
  京大経:京都大学経済学部図書館
  京大文:京都大学文学部図書館
  京大人文:京都大学人文科学研究所図書館
  漢情セ:京都大学人文科学研究所漢字情報研究センター(旧東方部)図書館
  山大東亜研:山口大学東亜経済研究所図書館
  九大図:九州大学附属図書館
  九大法:九州大学法学部図書館


(2008/11/26 公開)