『東洋法制史研究会通信』 第2号(1988年6月15日)

  《記事》
中国の法学定期刊行物──中国みやげ話

高見沢 磨



 現在中国では、極めて多種の定期刊行物が発行されている。法学関係についても同様で、各省レベルや大都市では、法制報と呼ばれる新聞が発行され、雑誌類も多い。しかし、その多くは、大衆に法律知識を普及するためのものであったり、その様なたてまえをとりながら、実は興味本意の三面記事集(性、暴力、迷信を主たるネタにする)のようなものであったりする。1970年代末から1980年代初頭、中国法学が復活しはじめたころには、出版物が少なく、とにかく入手しうるものは手に入れておくというのが日本の研究者のありかたではなかったろうか。しかし今日では、そのすべてに付き合う必要はない。とくに、定期刊行物のようなものは、本来、図書館がそろえるべきであって、個人がいく種類も購入するのは不合理である。経済的なこともさることながら、高価な日本の空間を考慮しなければならない。1985年8月から1987年8月までの留学期間には予約できるものは全てとった。その中で、読む価値のあるものの割合が比較的に高いと感じられたものを紹介したい。他の定期刊行物にも時に重要な論文が載るのは勿論だが、研究においても、費用対効果比を考慮することが必要と思い、以下のものにしぼった。これくらいをおさえれば、現在の中国法及び法学の在り方のおおよそがつかめると思う。ただし、法制史の分野では、歴史関係の定期刊行物も重要ではあるが、ここでは、法学関係のみ扱う。


[1]官報的なもの 

従来、中国の法源、立法制度は完全には体系化されておらず、いったい何が法なのかまた、それぞれの法令の効力はいかなるものか、わかりにくかった。1987年4月21日に「行政法規制定程序暫行条例」が制定されたので、今後少しはわかりやすくなるだろう。

 中央の重要法令は人民日報、地方法令は地方紙にも載るが、基本的には、

  (1)全国人民代表大会常務委員会公報
  (2)国務院公報
  (3)最高人民法院公報

で、中央法令をおさえればとりあえず十分であろう。これらはいずれも日本で書店を通じてとることができる。


[2]新聞

 前述の如く、各地で法制報が発行されている。しかし、その多くは、地域の一般大衆に向けて法律の知識を普及することを目的とした記事がほとんどというものである。時に地方法令があったり、地方の現状を知るに有益な記事もあるが、毎号というわけではない。故に、特に興味のある地域があれば、その地域の一般地方紙とあわせて読む必要もあろうが、一般的には

  (4)中国法制報(1988年1月より「法制日報」)

で十分と思う。これも日本で予約できる。


[3]雑誌

 これも種類が多い。しかし読みごたえのある論文というとわずかで、読む価値のある論文が比較的、毎号あるという点では、下のいくつかに限られる。

  (5)中国法学(中国法学会、本部 北京)
  (6)法学研究(中国社会科学院法学研究所 北京)
  (7)政法論壇(中国政法大学 北京)
  (8)政治与法律(上海社会科学院法学研究所)
  (9)法学評論(武漢大学法律系)
  (10)西北政法学院学報(西北政法学院 西安)
  (11)法学季刊(西南政法学院 重慶) (5)(6)(7)は日本の書店でも取り扱っている。他のものも国内外公開発行である。
  (12)復印報刊資料(復印資料 中国人民大学 北京)

も、あれば便利である。これも日本の書店で頼める。 

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